2011年06月02日

ナツコ 沖縄密貿易の女王

ガイドの本棚 3回目は「ナツコ 沖縄密貿易の女王 」(文春文庫)


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沖縄の戦後、密貿易の時代があったなんておだやかではありませんが、実話として興味深くよみました。
ナツコは戦後の一こまを密貿易とともに駆けぬけたひとりの女性。
1945年、昭和20年6月に沖縄戦がおわる。すべてが焼け野原。食べるものも着るものも住むところもない。生きるために始まったのが密貿易。

彼らが懐かしんで「ケーキ(景気)時代」と呼ぶその時代は、1946年(昭和21年)から51年までの6年間ほどだが、沖縄中がヒステリー状態になったように、子供から老人までこぞって密貿易にかかわるという異様な時代であった。、、、、誰にも拘束されないかわりに、才覚と度胸ひとつで大金をつかむことができた時代でもあった。彼らが「女親分」という夏子は、しかし彼らの上に君臨したわけではなかった。「貧しかったが、夢があった」時代の、いわば象徴的な存在だったという。

さいはての島、与那国島は密貿易の拠点だった。台湾まで110キロと、沖縄本島までの距離の約5分の1。台湾には豊富な食糧や物資がある。盗んだ米軍の物資を台湾の食糧や物資と交換する。米軍政府は貿易を禁止して5年以上も鎖国状態にしていたから、自然発生的に密貿易がうまれた。米軍の援助物資だけでは沖縄島民が生きていかれなかったからだ。

「戦果」とは米軍キャンプから資材を盗むことを戦果をあげるといった。軍作業のために米軍キャンプ内にはいると、なかには生きるために必要な物資のすべてがそろっていた。はじめは米軍も大目にみていたが、やがてバッテリーや拳銃、手りゅう弾まで盗まれるようになると、取り締まりはきびしくなり、撃たれて死んだものもでたという。

そのような背景のなかで、ナツコが密貿易のかしらとして頭角をあらわしていく。

米軍の統治下におかれた沖縄は、B円という特殊貨幣を使い、やがてドルが流通するが、日本本土の企業へ流れていき沖縄は豊かになることはない。自給率はひくく、輸入依存の経済がいまも続いている。

波乱にとんだ密貿易のことにとらわれて読みすすんでしまいますが、戦後沖縄の混乱した時代と、さらに米ソ冷戦時代の世界の歴史背景が丹念にえがかれていることに注目です。

同時に、ナツコがどういうひとなのかがはっきり見えてきます。二人の女の子の親でもあります。仕事にばかり時間をつかっている仕事人と二人の子の親としてのナツコ。その葛藤や心情がていねいに描かれています。


ナツコ―沖縄密貿易の女王(単行本)
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2011年05月02日

沖縄独立を夢見た伝説の女傑 照屋敏子

ガイドの本棚 2回目は
沖縄独立を夢見た伝説の女傑 照屋敏子


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戦後沖縄の一時期に、沖縄独立を夢見たひとりの女性の物語。

照屋敏子は9歳で糸満の魚売りになった。両親はブラジル移民を志したが、母は船上で死亡、父も沖縄へ帰ってすぐに亡くなった。
9歳の女の子が7キロの魚のはいったかごを頭にのせて那覇や首里まで売り歩く。過酷ともいえる仕事から照屋敏子の人生が始まった。

10・10空襲と呼ばれる空襲が那覇を襲うのは1944年、10月10日。太平洋戦争が始まっていた。那覇、首里は爆撃でほとんど焼け野原となった。すでに結婚して照屋家の嫁になっていた敏子は、家族で鹿児島に疎開する。

戦後の混乱期に福岡は本土、沖縄の引揚者でごったがえしていた。沖縄引揚者の救援事業として、漁業団を組織し漁に出かけた。漁船12隻を率いて漁をする女船頭だ。グルクン(いまは沖縄の県魚)の公定価格を引き揚げさせたくだりはすごい迫力に充ちています。

物価庁でも毎日新聞総局でも、漁師たちを従えた、どてら姿の敏子に乗り込んでこられて、さぞやびっくりしたに違いない。「沖縄を差別するのか。グルクンがイワシ並みの八級品とは何事だッ。あんたら、復員者を飢えさせる気か」と、どてら女は怒声を張り上げる。お役人はこんなことを書きたてられてはかなわないとオロオロし、記者たちはそのど迫力に気圧(けお)された。敏子は商売と喧嘩のツボを心得ていた。

ときは流れて、わに革と宝石の店クロコデールストアを那覇の国際通りで経営するようになる。アメリカ軍の統治時代だ。高等弁務官が沖縄を支配していたが、その高等弁務官夫妻も訪れたという。ものすごくもうかったお金を次々と新事業につぎ込んでいく。沖縄の独立のためにメロン栽培、魚の養殖、マッシュルームの栽培などを手がけた。まだ、本土復帰前のこと。いずれも先見の明がある事業だが、早すぎたのか、残念ながら成功しなかった。しかし、


「沖縄の島はあんた、あくまで琉球人のものですよ。かつては琉球王国だったんだ。それを日本が母国のようにいう。いまさらなんだ」「沖縄の男には〇〇〇〇がない。惰民になりさがった。土にまみれて働けば独立できるんだ」

という照屋敏子の持論はいま読んでも迫力があります。思想としては乱暴だが、沖縄の独立にかける熱い思いが伝わってきます。

1984年(昭和59年)68歳で亡くなり糸満市に広大な墓がある。戦前、戦後の混乱期、復帰後の沖縄にかけて生き抜いた女性のいきざまがいつまでも忘れられません。本書は第14回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
タグ:照屋敏子
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2011年04月20日

沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史

ガイドの本棚は、ガイドが読んだ本をご紹介するカテゴリです。
琉球・沖縄に関するものが主ですが、琉球・沖縄を知るうえでご参考になれば幸いです。

その一回目は、「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史


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戦後の沖縄をしたたかに生き抜いた人々を取材した本書は、当事者以外だれも知らなかった事実を本人に直接取材し、あからさまに記録しています。

重要なのは、沖縄が置かれた”大枠”の状況を語ることではない。そうした歴史的地理的制約をむしろプラスに転嫁し、その変転する状況のなかで、したたかに生き抜いてきた人間たちひとりひとりの物語を語ることである。
戦後沖縄史は未知の世界です。
まったく知らなかったことばかり。密貿易、やくざ、アンダーグラウンドの世界がこんにちの沖縄のもといを築いたかもしれません。戦争で焼け野原となって、なにもないところからこんにちの沖縄がうまれました。しかし、私たちはこんにちの沖縄のすがたしか見ていません。戦後沖縄史を知るうえで本書は大きな示唆を与えてくれます。

以下、目次の大項目と感想です。

1 天皇・米軍・沖縄県警
  •   沖縄は飲酒運転は多いのはわかっていましたが、殺人事件が飛び抜けて多いのに驚きます。地縁、血縁の濃さに由来している!。
  • CICというスパイ活動があった!。
  • エリート議員の失踪事件は、三面記事的ですが、実際に起こったこと。
2 沖縄アンダーグラウンド
  • 空手は琉球・沖縄の伝統武術ですが、空手が強く、ケンカに負けない人物がヤクザに。ヤクザの抗争が3派に分かれて続いた。沖縄にはヤクザはいないと思っていませんか?いたのです。ヒットマンとは銃で相手の首領を倒す人。ヤクザの首領やヒットマンに取材している!。(著者の顔写真を見たら、この人ならできると納得。)戦後沖縄のアメリカ支配の混乱期に生まれたこれらの人々の生きざまが圧巻です。
  • 奄美大島は沖縄から切り離され、沖縄から差別された。沖縄は日本から差別された。差別された側が差別する側に回った!。
  • 与論島で生まれた有村氏が東京ー沖縄や神戸・大阪ー沖縄航路を開いた!。この航路で、私は何度も沖縄へ渡ったのです。
3 沖縄の怪人・猛女・パワーエリート
4 踊る琉球、歌う沖縄
5 今日の沖縄・明日の沖縄


その他、アメリカ軍の思想弾圧などの実態など。今でも軍用地が投機の対象になっていたり、嘉手納基地内の広大な軍用地を持つ軍用地主がいる、などなど、沖縄に住んでいてもわからない事実がつぎつぎと展開されるのには、正直、驚きました。

内容の詳細や突っ込み方にややばらつきを感じますが、それは著者があらかじめ断り書きをしているので、そのつもりで読むべきでしょう。

私はこの取材で、これまでまったく耳にしなかった話をおびただしく聞いた。とても信じてもらえそうにない光景を各所で目撃した。本書ではそれをいわばゴーヤーチャンプルー風のごった煮状態のまま報告していきたい。


私の住んでいる今帰仁村(なきじんそん)で、嵐山にハンセン氏病棟が密かに建設されようとし、住民の猛反対にあったことが書かれていますが、今帰仁村誌に確かに記述がありました。

ある意味では、普通の市民も、歴史の一こまを担わされているともいえます。沖縄、日本、アメリカという三角関係は今でも続いています。そういう状況を知らずに、私は長年沖縄に住んでいたわけです。地元沖縄に生まれ育った方でも、本書に書かれたことは、知らなかったのではないかと思います。

NHKテレビ番組「ちゅらさん」で、一躍沖縄は親和度が上がりましたが、まだ、観光的南国のイメージが一般的です。もう少し、突っ込んで沖縄を知ろうと思う方なら、本書は充分参考になると思います。

本書表紙の写真は、おそらく戦後まもない頃の洟をたらした子どもです。この本が訴えたいことを、この少女は横目で訴えているようにも思えます。

私の総合評価は5つ星。同世代であること。私と同じ県外出身者として、著者は沖縄を見ていること。の2点に共感するため、少し甘い評価かもしれませんが、、。

参考: 5つ星を付けたアマゾンのレビューを以下に引用します。
冒頭で筆者は語る。今作は、本土のジャーナリズムの中で今まで支配的だった沖縄への左翼的自虐的な視座には汲みしないと。そして、その通り、650ページにも及ぶ長編を読み終えて、沖縄の戦前戦後史を賑わした有名無名な人物たちに焦点をあてる事で、戦後63年、今まで正面切って語られる事が少なかったその陰と闇の部分が解き明かされるルポルタージュとなっている。
 
「海燕ジョーの奇跡」のモデル、伝説の義賊、ヤミ金のドン、反米反基地の闘士、知事選の泡沫候補、国立大卒の老舗クラブのママたち、政財界の陰の黒幕に、山中貞則や瀬長亀次郎、川平兄弟の父親から安室奈美恵の育ての親まで、様々な職業、名士からアンダーな者たちが、深く絡み合い、結びつき、その過酷な状況を生き延びてきた歴史が読み取れる。 

そして、また今作では、沖縄本島の奄美ら周辺諸島への露骨な差別、搾取についても言及する。被差別を受けた者たちが、更に差別する過酷な現実に触れながら、本土への早期復帰を果たしながら、沖縄本島からもアメリカからも見捨てられた奄美の人々に、光であれ闇であれ、戦後沖縄の復興の礎となったその生き様のヴァイタリティを見る。
 
善悪が混沌とした世界の彼方には、やはり基地の街、被差別の街とのイメージが浮かび上がってくる今作、沖縄という数奇で余りに翻弄された辛苦の歴史を辿って来た者たちの壮絶なクロニクルが胸に迫る力作。
アマゾンのレビューの評価は5つ星から2つ星まで大きく分かれますが、沖縄の地元の人でも知らない事実を突き止め、本人に直接取材したことは高く評価されるべきでしょう。
posted by gusukutarou at 20:28| Comment(2) | TrackBack(0) | ガイドの本棚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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